広告系の制作会社が加盟する「公益社団法人 日本広告制作協会(OAC)」は、東日本大震災の翌年から毎年、オリジナルカレンダーを制作して岩手県大槌町へ贈呈しています。
「こういう時だからこそ、きれいな絵や写真を見て気持ちを落ち着かせたいのよ……」。
震災直後に被災地で耳にしたそんな声を受け止め、クリエイターだからこそできる支援を行うべきだと考えたからです。
3回目を迎えた昨年は、大槌町の小学生たちが描いた地元の特産品や祭りなどをもとにクリエイターたちがデザインを競作。優秀作品をまとめたカレンダーを銀座三越や盛岡川徳百貨店などでチャリティー販売を行うとともに、約1800部を大槌町の仮設住宅や小学校へ届けました。
平和な毎日を過ごす私たちにとって、カレンダーはごくありふれたもの。しかし、復興を指折り数えて生きる人たちにとっては、これからの道のりを示すかけがえのないものです。
自分の絵がデザインされたカレンダーを手に大喜びする大槌の児童たち
すっかり顔なじみになった仮設住宅に暮らす方々
有史以来、三陸地方は太平洋から押し寄せる津波によって幾度となく大きな被害を被ってきました。その一方で、太平洋は水産業を中心に人びとの暮らしを支え、生活を彩ってきた豊穣の海であることも事実です。今年は、そんな太平洋がもたらす恵みと海にかかわる人の暮らしをモチーフに、震災以来継続的な支援を行っている大槌町の姉妹都市、カリフォルニア州フォートブラッグ市ダナ・グレイ小学校の4年生と町立大槌学園の小学4年生が、クリエイターたちと力を合わせてカレンダーを作ります。
大槌町とフォートブラッグ市はほぼ同緯度にあります。
フォートブラッグ市の海岸/中心街/海辺に残る古い灯台
大槌町は今、かつての中心市街地を大型ダンプがひんぱんに行き交い、土地かさ上げなどの 造成工事が進んでいます。しかし、震災から4年以上が過ぎてなお不自由な仮設暮らしを余儀なくされ、生活再建のままならない人たちが数多く存在します。一部に自宅の再建や生活のメドが付いた人がいる分、明暗が別れ、取り残された人たちは震災直後より大きなストレスを抱えている状況です。
「震災当時と比べると、ボランティアの人たちも今では数えるほど。だから、来てくれるだけでも嬉しいんですよ」。昨年11月、出来上がったカレンダーを携えて大槌町の仮設住宅を訪問した際に聞いた話です。また、被災地以外では震災の記憶が次第に薄れていることも事実です。
こうした背景から、私たちは今年も大槌町への支援を継続することを決めました。
高台から見下ろした大槌町の中心市街地。元の姿に戻るにはまだ時間がかかる
元々大槌町をはじめとする三陸一帯は、震災以前から人口減少や経済の停滞に苦しんできた地域です。震災はそうした状況に追い打ちをかけ、大都市圏とのさらなる格差を生んでいます。
復興支援にとどまらず、姉妹都市であるフォートブラッグ市との連携で、豊かな自然と歴史に彩られた大槌町の存在をより広く社会にアピールしたい・・・。復興支援を始めて足掛け4年になる今年、私たちは復興支援と同時に大槌町の魅力を少しでも多くの人に知ってもらい、まちの活性化と賑わいの再生につながるカレンダーづくりを目指したいと考えました。
「ひょっこりひょうたん島」のモデル、大槌湾に浮かぶ蓬莱島と、再開された鮭の定置網漁
鮭、ホタテ、ワカメ……。屈指の好漁場、三陸沖が目の前に広がる大槌の海産物
今年制作する「海からの贈り物CALENDAR2016」は、A2サイズで3,000部を印刷予定です。
デザインは会員社のクリエイターがボランティアで、経費の一部は協会が拠出しますが、印刷費用と展覧会(チャリティー販売で義援金も募ります)経費などで、およそ240万円が必要となります。今後一般の方を対象にReady for(Webでの募金サイト)でも資金を募りますが、ぜひとも皆さまのご協力をお願いいたします。